東京、千葉、神奈川、ペットの往診動物病院です。飼い主様の環境とその子にあった治療方法をご提案いたします。
連日の嘔吐 
2016年08月20日 (土) | 編集 |
先日の往診症例です

11歳のスコティッシュのパトラちゃん

「10日前から毎日吐く」ということです

でも、食欲も元気もある。ただただ「吐く」

すぐに往診に伺いました。

パトラちゃん、以前もブログでご紹介したことがあります。
http://shimapetclinic.blog.fc2.com/blog-entry-180.html

パトラちゃんはもともと解剖学的にお鼻の穴が非常に狭く、呼吸がしにくいなどの問題があります
写真③_2013-5-19


自宅にいても、少し息が上がると、口を開けて一生懸命呼吸する様子が見られます。

それがゆえに、以前病院に連れて行ったときに興奮したパトラちゃんは開口呼吸になりチアノーゼ(全身の酸素不足) を起こしたため、それ以来病気になった時には往診を利用されてきました。

さて、毎日吐くというパトラちゃん。

往診に伺うと、表情は悪くないです。聴診も問題無し。

今回1番引っかかるのが、「食欲や元気はある」というところです。

皆さまは「食欲や元気がある」から「良い」ように感じませんか?

しかし、11歳という高齢で、毎日嘔吐し、それなのに、食欲元気があるというのは非常に違和感を感じます。

動物が「吐く」といった場合、
・単純な胃腸炎
・異物
・腎障害や肝障害、甲状腺機能亢進症などの内臓、内分泌疾患
・蓄便、蓄尿

などなど、様々なことが考えられますが、さらに、高齢になると
腫瘍
も考えていかなくていけません。

そして、腎障害や肝障害といったものに付属する嘔吐は、食欲や元気もない場合が多いです。

まずは血液検査を行いました。腎臓も肝臓も甲状腺も全く異常がありません。

触診が非常に重要になってくるのですが、異常ではない程度の蓄便がみとめられたので十分には触ることができません。

飼い主さまと腫瘍の可能性も含め今後必要となる検査も含めお話ししました。

治療として、まずは「単純な胃腸炎がある」と仮定して、胃腸炎の治療を1週間行うことにしました。

そして、少し固めの便が蓄積していたので、腸内の動きを良くし、蓄便をまずはなくすことにしました。

治療して1週間。最初は薬に反応し良いかな!?と思いましたが、薬をやめると吐き始めます

蓄便がなくなったお腹を触診すると、何かコロコロとしたもの(便ではない)が2−3個触診できます。

おかしい・・・

そこで、やはり詳細な検査が必要と判断し、いつもお世話になっている中央アニマルクリニックさんの腫瘍専門外来で診ていただくことにしました。
http://www.forpets-cac.com

病院がとても苦手というお話しを聞いていましたので、この日はパトラちゃんのお家から私も一緒に同行。
検査中もずっと一緒に同席させていただきました。
IMG_98p22.jpg


呼吸のことも廟院にお話ししてあったので、病院側も酸素マスクの準備を始め、非常にスムーズに検査してくださいました
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その結果、やはり、お腹の中のリンパ節が「異常」に腫れています
IMG_p9820.jpg


お腹の中には腸がありますが、その腸が絡まないように、膜でつながれています。
その膜の間にリンパ節というものがあります。
IMG_98p98.jpg


通常は2mmくらいの米粒サイズ

しかし、パトラちゃんのリンパ節は2cmくらいになってます
IMG_p9820.jpg


明らかに「異常に」大きいのです

もちろん、一過性になんらかの炎症が起き、リンパ節が反応して腫れていることも考えられなくはないですが、「リンパ腫」が非常に疑われるという診断になりました。


本来であれば、次のステップは腫れているリンパ節に針を刺し、細胞診を行い、「リンパ腫」なのか「そうではない」のか確認していきます。


しかし、パトラちゃん、さきほどお話ししたように、外に出ることがとても苦手で、呼吸がすぐに悪くなります。

飼い主さまと今後の経過をたくさんお話ししました。

飼い主さまの意向としては、仮にリンパ腫だとしても、抗がん治療を行うのはパトラの呼吸を考えても難しい、完治する疾患であればストレスをかけてでも頑張りたいと思うけど、
病気を受け入れるから、少しでも今の穏やかな時間のままでいさせたい
ということです。

中央アニマルクリニックの腫瘍科の先生も、決してスタンダードな診断・治療法ではないけれど、でも、治療的診断という方法を取りましょうとご提案くださいました。
IMG_98p23.jpg


ステロイドという薬には、リンパ腫を抑える効果も、また、何らかの炎症を抑える効果もあります。
なので、今のパトラちゃんに投与すれば、確実に状態は改善します。

まずは2週間ステロイドを投与して、その後は往診で触診してリンパ節を確認し、リンパ節が小さくなればその後減薬していきます。

「単純」な炎症だったのであれば、おそらくそれで治っていくでしょう。

「リンパ腫」であれば、必ずまたリンパ節が腫れてきて、状態が悪くなるでしょう。

ステロイドを投薬して今日で約5日。パトラちゃんは嘔吐もなく食欲元気もとってもあり非常に状態が良いそうです

気持ち良さそうにスヤスヤ眠るお写真を頂きました。
IMG_98p82 2


8月末に往診でリンパ節の確認に行きます。

我が子に「腫瘍」という診断をされた飼い主さまのお気持ちは想像をはるかに超えた辛さがあります。

ある方がおっしゃっていました。
「もう治療法がない」と診断された場合、その動物はもうなすすべがなく命を終えていく方向に進んで行く。

でも、「今日を元気に」という気持ちで周りが過ごしていく場合、その動物は生きる方向にエネルギーが向くのだと。

本当にそう思います。

なのでリンパ腫じゃない可能性を祈り、そして、もしリンパ腫だとしても、今日という日がパトラちゃんとご家族にとって笑顔で元気で幸せでいられるように。

パトラちゃんのご家族、今日も笑顔で過ごされています。

丁寧かつ迅速な検査をしてくださいました、中央アニマルクリニック院長椎名先生、腫瘍専門医である井上先生、スタッフの皆さま、本当にありがとうございました。

しまペットCLINIC
shima.pet.clinic@gmail.com

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